トップページ > ビートルズと英国文化 > ビートルズを100倍楽しむ方法 > イギリスの社会階級

■ビートルズと英国文化 - イギリスの社会階級

 イギリスは,歴史と伝統を重視する国であるが,その中で,1億総中流といわれる日本人には理解し難い社会階級が厳然として存在し,その間には積極的な交流はなく,通う学校,愛読する新聞から,しゃべる言葉まで違うといわれる。

 その社会階級は「上流階級 (Upper Class)」「中産階級(Middle Class)」「労働者階級(Working Class)」の3つに大別される。

 「上流階級」としては,まず,1066年のノルマン・コンクェストでイングランド王位に就いたウィリアム1世に随行してフランスから渡ってきた者たちなど,封建社会の中で領主であった中世貴族や,16世紀のヘンリー8世の時代に貴族に叙せられた新しい貴族たちの末裔たちがいる。いずれも身分は世襲制で,上院に議席権を持つ。位階は上から,公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順である。上院に議席議席権は持つが世襲でなく,一代限りの貴族の称号は,その社会的功績に対して与えられる。ポールはこの例である。また,世襲貴族に準ずる階級としては,いわゆる「ジェントリ」と呼ばれる大土地所有者がいる。また,18世紀以降,資本主義社会の発展の中で,貿易や,産業経営の中で財をなした資本家階級がいる。これらがイギリスの上流階級を形成する。

 それに対し,産業革命以降の経済的発展は,貴族や大地主ほどではないが,額に汗して油まみれで働く必要のない,中小企業経営者や,医者・弁護士などの上層ホワイトカラーに代表される中産階級を生んだ。この階級は上流階級とともに,政治的には主に保守党を支持し,その子弟をイートンやラグビーなどの名門パブリック・スクールから(優秀ならば)オックスフォード大学やケンブリッジ大学へ送り込むことのできる階級である。

 上記の2つの階級に対し,ビートルズの4人(ジョンの引き取られたミミおばさんの家の家庭は結構な「中産階級」であり,ジョージとポールの家庭もそこそこのレベルには達していたが)は「労働者階級」の出身である。

 この労働者階級は,基本的に額に汗して働く以外の収入を持たず,時として(リンゴの家庭が好例であるが)スラムとも呼べるような地区に住み,劣悪な生活環境にも甘んじなければならなかった。日本なら貧しい家庭の出身者でも,優秀でありさえすれば,一流大学へ進学し,国家官僚や医師や弁護士になる道が大きく開かれているが,イギリスでは,各階級は極めて閉鎖的であり,階級間の移動は非常に少ない。したがって,労働者階級の若者ににとっては,将来は決して明るいものではなく,一旗揚げようと思えば,かつてならインドなどの植民地へ渡り自らの運を試し,1960年代以降はギターを抱えてロックをやるしかないということになるのである。

ロックで学ぶ現代社会

ロックミュージックを利用した高等学校「現代社会」授業の実践例のご紹介です。

教科書 「ロックの歴史」

ロックミュージックを中心に古代から1980年代までの音楽の歴史を世界史教科書風に記述してみました。