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■ビートルズと英国文化No.2 ビートルズ謎学の旅-MAGICAL MYSTERY TOUR

*ビートルズの曲を聴いたり彼らに関する本を読んでいると,時々ふと気になって気になって仕方がないことが出てきます。このページは,そんな疑問に“な・る・ほ・ど!”と思わず膝を打つ回答を与えるべく,いろいろと調査した結果を発表するコーナーです。とりあえず項目数が少ないので,「あれは一体何?」「これはどういうこと?」というものがあったらぜひメールを送ってください。調査の結果このページに掲載してゆきたいと思います。


mystery
登 場 場 面
解  説
"Ticket To Ride"
は何のチケット?
「涙の
 乗車券」
 これは実はバスのチケットです。
 1997.6.27 イギリスのTV番組「TFIフライディ」に出演したときポールが自分でそう言っています。


レイモンド=ジョーンズ


歴史上の
人物
 1961年10月ブライアン=エプスタインが経営するレコード店NEMSに「ビートルズの"My Bonnie"をくれ」と言ってやって来て,ブライアンにビートルズのことを初めて知らせたと言われる18歳の青年。ブライアンはこれがきっかけでキャバーン・クラブへビートルズのライブを見に行ったと言われる。しかし,1997年5月24日ペニー・レインで行われた「ペニー・レイン・フェスティバル」の席上,かつてビートルズのアシスタントであったアステリア=テイラー氏が,この人物は自らがでっち上げた架空の人物であったことを暴露した。
 しかし,近年非常に興味深い情報が入った。2004年に発行されたイギリスの音楽雑誌「Mojo」別冊「The Beatles 10 Years That Shook The World」には現在スペインで暮らすレイモンド=ジョーンズ氏の近況と若き日の写真が公表されている。
中山康樹著「ビートルズの謎」(講談社現代新書)より


“セイウチはポールだった”

"The Warlus was Paul."



"Glass
 Onion"

 の歌詞
 「ホワイト・アルバム」収録曲,"Glass Onion"の中でジョンが"The Warlus was Paul."と歌っているが,これはセイウチ(ウォルラス)の着ぐるみに関して,『スチール撮りの際には僕がウォルラスを被ったけど,映画撮りではジョンが被った』と答えていることから分かるように,映画「マジカル・ミステリー・ツアー」の中("I Am The Warlus"演奏の場面)では,ジョンがセイウチの着ぐるみをかぶっているけれど,アルバム(アメリカ盤,英国盤はEP)のジャケットのカバーでは,実はポールがセイウチをかぶっていたということの種明かし。これがジョンが『ウォルラスはポールだった』と歌っていることの意味。
(協力:伊東直人さん)


“いとしのレイラ”


Layla



デレク
 &
ドミノス

の曲名<
/TD>
 デレク&ドミノスはエリック=クラプトンを中心とする1960年代のロックバンド。“いとしのレイラ”はその代表作。で,どうしてそれがビートルズと関係あるかというと,エリック=クラプトンはジョージの妻パティ(映画"A Hard Day's Night"の列車中のシーンに出てくる女の子のひとり)に恋をして,その許されぬ愛に身を焦がしこの曲を作った。つまり“レイラ”とはパティのこと。ちなみに,その後ジョージはパティをクラプトンに“譲り渡し”た。
 また,この“レイラ”という名前は,11世紀から12世紀のはじめにかけて活躍した有名なペルシアの詩人“ニザーミー”(ニザーム)の『レイラとマジュヌーン』(ペルシア語では『ライラとマジュヌーン』)からとったもの。内容は,美女ライラに恋してマジューン(凶人)となった青年カイスの物語で,アラブ遊牧民伝承の有名なロマンス。まさに『いとしのレイラ』にぴったりの題材ですね。
 入手方法ですが,平凡社から出ている東洋文庫394に『ライラとマジュヌーン』(ニザーミー著 岡田恵美子訳)が収録されています。1995年現在1854円です。ニザーミーの作品は東洋文庫には他にも2冊ありますので,興味のある方はどうぞ。
(協力:ビートルズ友の会)


"Ob-La-Di,Ob-La-Da"


曲名

"Ob-La-Di, Ob-La-Da"
 "Ob-La-Di,Ob-La-Da"とは,アフリカ,ナイジェリアのヨルバ人の言葉で,"Life goes on."(人生まだまだ,先はながいよ〜,ケセラセラ〜)に当たる言葉であるとの説がある。(出典 "A Hard Day's Write"

 1968年,ポールはよく,ロンドンのソーホー地区にあるクラブ,バッグ・オ・ネイルズ(The Bag O'Nails)という店に通っていたが,そこにナイジェリア人のジミー=スコット(Jimmy Scott)というコンガ奏者の老人もよく来ていた。この老人,いつもサングラスをかけており,「オブラデイオブラダ〜」という言葉を自分の名刺代わりのフレーズとしてくちずさんでいた。ポールはその言葉の語呂が気に入り,このタイトルの曲をつくったとのこと。

(協力:ひげおやじさん)



 しかし,国立民族学博物館(当時)のヨルバ語の専門家,小森淳子さんによると,ヨルバ語にそれに当たる言葉は存在しないとのこと。大阪外国語大学のヨルバ人のオラボデ先生にも問い合わせていただいたが,ジミーおじさんは違う地域の出身かも知れないが,(それにしても全く見当がつかない言葉,というのはないと思われるが)やはり該当語は存在しないとのご回答であった。また同様の質問をナイジェリア人とご結婚なさっている日本人女性 Kana さん(ホームページはこちら)にもさせていたがいたが,やはり同様のご回答であった。

 上記のように不明のことが多いため,この件に関しては現在も調査中である。ご存じの方がいらっしゃったらぜひ情報を入れていただきたい。

 なお,小森先生によれば,ヨルバ人とはナイジェリア西部から隣国のベニンにかけて居住しているアフリカでも有数の大民族で,人口は2千万を越えるといわれている。奴隷貿易時代に狩り出された中にはヨルバ人も相当数いたそうで,ブラジルには今もヨルバ・コミュニティーが形成されていて,宗教儀式などではヨルバ語が使われているという。



"20 (twenty) carat golden ring"


曲名

"Ob-La-Di, Ob-La-Da"
 曲中,デズモンドがモーリーのために買った「20カラットの金の(婚約)指輪」というのは,一般のイギリス人(の労働者階級)から見てどのくらいの価値があるのだろうか?話の流れの中ではかなり奮発したような気がするのだが…?

相場とおり?
それともデズモンドは結構奮発したの?
それともケチったのか?

 日本ではちょっと考えにくいのだが,イギリスでのアクセサリーは9カラットの金というのが一般的であるそうだ。勿論,値段的に断然安い。

 ということで,イギリスでは大体のアクセサリーは9カラットであるが,やはり婚約リングやウエディングリングになると必ず18カラット以上が使われる。ここで面白いのは,果たして20カラットの金のアクセサリーというのは存在するのだろうか?ということ。
 ロンドン在住の伊東直人さんのご報告によると,英国で見る限り,9,18,22,24金は見るが,20カラットの製品というのを見たことがないということらしい。数が少ないだけなのか,またはPaul特有のヒネリなのか?依然として分からないことがこの曲には多く存在する。

 しかし,私が考えるのには,本当は「20カラット」なんていう指輪はないのかもしれないけれど, "buys"と韻を踏む(というか,語呂をよくする)ためには"twenty"でないと困ったのではないだろうか。

"buys a twenty-four carat golden ring"だと字余りだし,
"buys a eighteen carat golden ring"だとeighteenが尻上がりのアクセントで語感が悪い…。
ということで「twenty」に落ち着いたのではないだろうか

(協力:伊東直人さん)


"number"
 と
"situation"


"You Never Give Me Your Money"
 イギリス英語で"number"は電話番号。これは分かりやすいが,実は"situation"は「状況」ではなく,「住所」の意味という説がある。この説に従えば,

"I never give you my number. I only give my situation."

の部分の意味は,

「君には絶対電話番号は教えない。住所だけにしておこう。」

というような意味になる。

 しかし,一般的な表現ではないにしても,これが通常の会話文であればそれ程無理もないが,前半部の歌詞で

"You never give me your money, you only give me a funny paper."
『君はお金をくれやしない,ただヘンテコな紙切れをくれるだけ』

と初めからお金に対する不満を歌っているのと,アラン=クラインの努力も空しく,当時Northern Songsの株主ががATVにそれを売却してしまい,自分たちの曲が他人に管理されることになってしまったことを表現しているので

I never give you my number. I only give my situation.
「貴方には曲(number)をあげない。状況(situation)を説明してあげるだけ。」

と言う訳の方が自然である。その後の歌詞が,

And in the middle of negotiation, I break down.
『交渉中に,僕は泣き崩れる』

と言うこれまた当時の状況をうたっているので,『住所』『電話番号』と訳すのには無理があろうか。

 まずnumberに関して言えば,確かに電話番号という使い方が一般的である。ただ,この場合は『曲』としての意味がもっと強いと思われる。
ジョンが"Baby's In Black"を紹介するときに

"It's a slow number, and waltz!"
「スローな曲でワルツなんだ。」

と言っている事から,場合によってはsong, tune, trackというような用語を使いながらも,彼らが「曲」のことを一般的に"number"と呼んでいたことが推察できる。

 Situationという名詞は色々広く使われるので一概には言えないが,「住所」という意味に使うのは通常イギリス人でも一般的ではない。
 例えば,広い意味での場所を示したり,不動産屋などで家を購入する際に「立地条件」などと表現する場合にはSituationを使うことがあるが,特定の固有の住所となるとaddressを使う。

また,この単語の形容詞でsituatedがあるが,これも例えば日本から引っ越してイギリスに住んでいる,という意味で

"I'm situated in the U.K."

などと言う場合もあるが,主に大まかな「場所」を指す場合に使用し,

「123 Abc Lane, Twickenham, Middlesexに住んでいます」

という場合は

"I am living in 123 Abc Oak Lane, Twickenham."

と言うのが一般的。

情報提供 伊東直人さん Beatles ML Hisataka Suzukiさん
“あの子はちょうど17歳。オレのいってる意味
分かるだろ?”


Well, she was just seventeen.
You know what I mean.

"I Saw Her Standing There"

の冒頭の部分
 ポールはこの曲を当初"She was just seventeen. Never been a beauty queen."(あの子はちょうど17歳。ミスコンの女王にはなったことないけどね。)と歌っていたが,ジョンにダサいとけなされ,ジョンはその部分を完成版のように改めた。

 ここで語られていることは確かに意味深であるが,実は当時のイギリスでは,自分の意思で結婚・セックスを行うことが法的に有効になる年齢が16歳であった。つまり,彼女が17歳ということは,もう「してもいい年齢」であるということのほのめかし。

「ビートルズと60年代」イアン=マクドナルド著/奥田祐士訳 キネマ旬報社 72ページ 参照
“Isn't it good ? Norwegian wood.”


いいだろう?ノルウェイ製の高級調度だぜ。

"Norwegian Wood"  邦題は東芝レコードでビートルズ初代担当ディレクターであった高嶋弘之氏が付けた「ノルウェーの森」。この話はネット上のいたるところにみられるが、2017年10月22日(日)倉敷公民館で開催された「音楽講演会 『レコード秘話! ビートルズ作品ヒットの舞台裏』」で高嶋氏から直接伺った話の内容を記す。

 Norwegian Woodとはノルウェー産木材製家具(高級品のイメージ)を指すが、歌詞の流れから見て非常に不自然。これはもともとはJohnが

"Isn't it good ? Knowing she would."
あいつはヤラせてくれるんだ。イイだろう?

としていたものを、「ジョージ=マーティンが(高嶋説)」、さすがにそれはマズいだろうとNorwegian woodに変えさせたという。

*以上のほかにもまだまだ多くの重要なキーワードがあると思います。そういったものに関する情報,あるいは,お気づきのことやご質問等がございましたら,ご意見・ご感想・お手紙はこちらまでお願いします。

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