イギリス英語で"number"は電話番号。これは分かりやすいが,実は"situation"は「状況」ではなく,「住所」の意味という説がある。この説に従えば, "I never give you my number. I only give my situation." の部分の意味は, 「君には絶対電話番号は教えない。住所だけにしておこう。」 というような意味になる。
しかし,一般的な表現ではないにしても,これが通常の会話文であればそれ程無理もないが,前半部の歌詞で "You never give me your money, you only give me a funny paper."
『君はお金をくれやしない,ただヘンテコな紙切れをくれるだけ』
と初めからお金に対する不満を歌っているのと,アラン=クラインの努力も空しく,当時Northern Songsの株主ががATVにそれを売却してしまい,自分たちの曲が他人に管理されることになってしまったことを表現しているので I never give you my number. I only give my situation.
「貴方には曲(number)をあげない。状況(situation)を説明してあげるだけ。」
と言う訳の方が自然である。その後の歌詞が,
And in the middle of negotiation, I break down.
『交渉中に,僕は泣き崩れる』
と言うこれまた当時の状況をうたっているので,『住所』『電話番号』と訳すのには無理があろうか。
まずnumberに関して言えば,確かに電話番号という使い方が一般的である。ただ,この場合は『曲』としての意味がもっと強いと思われる。 ジョンが"Baby's In Black"を紹介するときに "It's a slow number, and waltz!" 「スローな曲でワルツなんだ。」 と言っている事から,場合によってはsong, tune, trackというような用語を使いながらも,彼らが「曲」のことを一般的に"number"と呼んでいたことが推察できる。
Situationという名詞は色々広く使われるので一概には言えないが,「住所」という意味に使うのは通常イギリス人でも一般的ではない。
例えば,広い意味での場所を示したり,不動産屋などで家を購入する際に「立地条件」などと表現する場合にはSituationを使うことがあるが,特定の固有の住所となるとaddressを使う。
また,この単語の形容詞でsituatedがあるが,これも例えば日本から引っ越してイギリスに住んでいる,という意味で "I'm situated in the U.K." などと言う場合もあるが,主に大まかな「場所」を指す場合に使用し, 「123 Abc Lane, Twickenham, Middlesexに住んでいます」 という場合は "I am living in 123 Abc Oak Lane, Twickenham." と言うのが一般的。
情報提供 伊東直人さん Beatles ML Hisataka Suzukiさん
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