トップページ > ビートルズと英国文化 > ビートルズ まじめなQ&A

■ビートルズと英国文化No.3 ビートルズ まじめなQ&A

 このコーナーは私(大坂)の,マニアから見れば初歩的な,素人さんから見れば「何のこっちゃ?!」と言うビートルズに関する質問に,ロンドン在住のビートルズ研究家伊東直人さんを中心とする先達の方々がお答え下さったご回答をまとめたページです。


Q1:

 私はCD開発・発売当初に東芝EMIが最初期の作品としてリリースしながら,(イギリス盤の発売が遅れていたため)英国EMI社から日本製CDの国際市場席巻を阻止するためにクレームがつき,発売中止になったといういわく付きの"ABBEY ROAD"日本盤(CP35-3016)を持っていますが,このCDにはプレミアがついてないんでしょうか。


A1:

(回答者 Hisashi Yonekuraさん)

 日本にいた頃,このCDを(真剣にではないが)探しても見つかりませんでした。でも,アメリカの通販会社のカタログで見つけました。

(参考までに)帯付き:$500 帯なし:$125


Q2:

(質問者:Noboru Takagiさん)

 BEATLESの曲ってほとんどが30年前に作られたわけですよね。「こんな言い方,最近はしないよな」とか表現の古臭さが耳につくことがままあるんですが,BEATLESの場合,そういう古臭くてダサイ歌詞ってあるんでしょうか?


A2:

(回答者:Naoto Itoさん)

 歌詞ではパッと思い出せないのですが,彼等の会話で良く出てくるGear!(かっこいい!)Can you dig it?(分かるかい?)は明らかに60〜70年代のスラングです。今使っている人はいませんね。(僕の大家さん談)

 ところで,ちょっと話題がそれて,GeorgeとRingoとJohnの英語発音はスカウス訛り(リヴァプール方言)がひどいので(それがまた良いんですけど,本当は)聞き取りが難しいですね。特にビートルズ時代は。

 GeorgeはAnthologyのテレビで久々に生声を聞きましたが,ちゃんと(普通に)発音していましたし,ポールはビートルズ時代から意識して訛りのない英語を話していたと思います。Johnは後年アメリカ英語に近くなっていました。で,何が言いたいかというとRingoのみですね,スカウス訛りで話すのは。今だに聞き取りずらいです。(イギリスのテレビ番組で良くコメディアンがRingoの物マネをするのもこのためなのかな?)


Q3:

(質問者:大坂,以下Q10まで)

 私は高校の教員で(本当は世界史担当なのだけれどもいろいろ事情もあって)実際に英語の授業でビートルズの曲を教材に使った事があります。

 文法を無視した歌詞とか,スラングなんかがあって,すべてを教えるわけにはいかないけれど,たとえば

"Yesterday"

 "long for〜"  とか

"Ob-La-Di,Ob-La-Da"

 "takes him by the hand"とか,

学校文法でも重要な表現は多いですね。これは利用しない手はありません。

 しかし,それにつけても思うのが,CDなどに付属の歌詞カードのいいかげんさです。

 たとえば "Imagine"の3番の歌詞は,つい最近になるまで

 "And the world will live as one." となるところが

 "And the world will be as one." と書かれていたり,

 "Happy X'mas" "Happy X'mas Jule(Julian). Happy X'mas Kyoko."が,

 "Happy X'mas John. Happy X'mas Yoko."になっていたり,

対訳でも"Jet"で,

 "Ah! Mater. Want Jet to always love me!" 

 「メイターはいつもそう(僕だけを愛してくれると)願っていたんだよ」 (山本安見氏訳)

と訳しているけど "Mater"っていうのは「おっかさん」ぐらいの意味でしょう?

だから「ああ(おっかさん=感投句)僕はいつだってジェットに愛してもらいたいんだ」でしょう?

 それから極めつけは>「赤盤(The Beatles 1962-66)」"Yellow Submarine"!!!!

どう聞いたって

 "So we sailed on to the Sun."  としか歌っていないのに歌詞カードは

 "So we sailed up to the Sun." でしょう?なんだか悲しくなりません?


A3:

(回答者:Naoto Itoさん,以下A10まで)

 歌詞に関しては,確かに"Imagine"に関しては確かにそうですね。歌詞カードが間違っています。

 また,"Happy X'mas"に関しても同様に間違いですが,ここで面白いエピソードを。

 この間違えは75年に発売されたJohnのベスト盤"Shaved Fish"に付いていた歌詞カードからです。発売当時にも英Melody Maker誌が誌上でこの間違えを指摘しました。これに対して雑誌社に来た返事が他ならぬJohn当人で,Johnは『10月に子供(ショーン)が生まれたのでその世話に忙しく,EMIに注意を払えなかったから。』と言っていました。しかしその後発売された『John Lennon Collection』でも同じミスを犯し,現在に至っています。

 また,"Yellow Submarine"

"So we sailed on to the Sun."

"So we sailed up to the Sun."   の問題に関しては,

 これは後者の方が正しいと思います。前にも書きましたが,スカウス訛り(特にRingo)を始めとして,英国北部のアクセントは南部で使われているいわゆる"Queen's English "とはちょっと違う発音をします。

 例えばPartyと言う単語をちょっと発音してみてください。本当は英語をカタカナで表記しては不都合なのですが,『パーティー』と第一母音が"ア"となったはずです。これはいわゆる“標準英語 Queen's English”ですね。しかし北部出身の友人の英語(彼はマンチェスター出身)は,"ア"と発音するより"オ"に近い発音をします。つまり『ポーティー』となってしまいます。同じくニューキャッスル出身の友人も同じような発音をします。

 ですから,当然スカウス訛りのきついRingoも"up"『アップ』と発音するのではなく,『オップ』になってしまうのではないかと思います。upのあとの単語がtoとTから始まる子音になっているので,Pの発音は殆ど聞き取れなくなってしまいます。ですからon toに聞こえてしまうかもしれません。


Q4:

 しかし,私はこのフレーズは

 sail   up to   the Sun ではなく

 sail on     to the Sun

 つまり

 「太陽めがけて(to the Sun),航海を続けてゆく(sail on)」

の意味だと解釈していたのですが,やはり間違いだったのでしょうか?

A4:

 察するにこの場合は『太陽目指して航海する』と言った意味合いが強いと思うので方角を示す『〜まで』つまりup toの方がしっくり来ると思います。(個人的な意見ですが,本当はいまにも『港から離れました』と言う意味あいで, out to the sun〜を察したいところなのですが。up toだと空を飛んで(ここがポイント)太陽を目指すような感じになってしまうのではないかと思うんですがねぇ。

 また,手元にThe Beatles 1962 〜1966のイギリス盤(ここがポイント)CDがありますが,その歌詞カードにはやはり"Up to"になっています。

 また僕の大家さん(イギリス人です)に聞きましたらsail on (the sea)と言う時にはonを使うらしいですが,方角を示す場合はonは使わない(というか言わない)と言うのです。で,試しにYellow Submarineを聞かせたところ,大家さんは "out to the sun"に聞こえるというのです。前回にも説明しましたが,北部訛りだと『アウト』が『オウト』になってしまうのではないかと思います。

 イギリス人も歌から歌詞を聞き取るのは至難の技らしいですね。ましてや日本人がトライしてもその限界があると思います。ホンとに難しいですね。

 また,時代によるスラングの変遷に関しては, Gear! (かっこいい!)や,Can you dig it?(分かるかい?)は明らかに60〜70年代のスラングです。今使っている人はいませんね。(僕の大家さん談)


Q5:

 In My Life の中に

 Some forever, not for better. Some have gone, and some remain.

という一節があります。この前半の部分は一般には

 「いつまでも残るものもあれば,悪くなってしまったところもある」

と訳されています。(カナダ人の友人もそう主張します)しかしその後が

 「なくなったところもあれば,そのままのところもある」

と,対比になっていることから考えても,この解釈はどうもおかしいと思っていました。

それで,考えるのですが,あまり一般的な表現ではないようですが, forever と同じ「永遠に」という意味の熟語に "for good" がありますね。

私は,ひょっとしたらジョンは韻を踏むために for good for better に変えているのじゃないか,そう考えればこの一節は,

「永遠に変らないところもあれば,そうでないところもある。
 いつまでも残るものもあれば,悪くなってしまったところもある」

と解釈できて非常にすっきりするのですが,そんなことはありえないのでしょうか?長年の疑問です。もしよろしかったらお教えいただければ幸いです。


A5:

 たった今,大家さん(2回目の登場)に聞いたところ,ちょっと聞いたところでは英語を話す民族は確かに,その「一般的な」解釈をしてしまうといいました。しかし大坂先生の韻を踏むためにGoodを Betterに代えたと説明したら,みょーに納得していました。

 彼いわく『やはり日常生活では歌の歌詞で会話をしている訳ではないから,このように書式にしないと殆どの人は理解しない(頭が回らない)』そうです。やはり,殆どの人は一般的な解釈をしてしまうようですね。


Q6:

 Ob-La-Di,Ob-La-Daで,最後のところでDesmondとMollyが入れ替わってしまうのはイギリス人が聞くと,ただのポールのジョークだと思うのでしょうか?それとも「ホモの夫婦」をsuggestionしていると聞こえるのでしょうか?


A6:

 難しいですね。では私見ですがお答えを。

 まず,GayカップルへのSuggestionという考えは違うとおもいます。歌詞にでてくるHerとHimという箇所,それにDesmondとMollyという明らかに男と女の名前,それから子供が出来るという点ではGayのそれではありません。それから言葉遊びの点ですが,これも比較的可能性が高いと思います。

 で,これは僕の意見なので正確ではありませんが,最後あたりの2行ラインで,

 Desmond stays at home and does his pretty face.

 And in the evening she's a singer with the band.

この最後のshe,実は男のDesmondのことだと思います。

 ここでイギリスの文化的理解が必要になりますので,簡単に説明しますね。

 僕が思うには,恐らく Transvestism のことがあると思います。つまり女性なら『男装』,男性なら『女装』といえば簡単でしょうか?

 イギリスでは良く独身最後のヴァチュラパーティー等で,男性が女装して友達の家に行ったり,新婦の家に行ったりしたりする習慣があるみたいです。

 また通常のパーティーなんかでもこのようなことがよくあるそうで,女性がそのボーイフレンド(または旦那さん)が女装しても,嫌がるどころかかえって面白がったりしています。また女装する男性にしても殆どの人がこういう事をすることに抵抗ないみたいですね。(というかイギリス人は抵抗ないそうです。ここが日本人の男性と違いますね)

 つまりDesmondは前記のようにMollyに代わって”シャレ”で女装してバンドで 歌うと,こう解釈してみてはいかがでしょうか?

 Desomond stays at home and does his pretty face.

does his pretty face=可愛い顔をする,直訳はこうですが,つまりこのラインが化粧か何かをしているという意味だと思います。(訳す際のニュアンスに多少違いはあると思いますが)言って見れば家で女装して,今晩のショーのために準備していると,その結果,

 And in the evening she's a singer with the band.

女装をしてバンドのメンバーとして歌っている訳ですから,ここでDesmondはsheになってしまったのではないかと思います。


 「追記」

 "Ansology 3"に収録された"Ob-La-Di, Ob-La-Da"公式アウトテイク(?)によると,正規盤でDesmondとMollyが入れ替わっている部分が,そのまま入れ替わらずに歌われています。ここから考えると,

「最初は入れ替わらずにそのまま歌われていたけれども,ある時ポールが間違えて(入れ替えて)歌ってしまったら,それが(ホモとか,女装趣味だとかを連想させて)妙に受けたものだから,そのままレコードにしちゃった」

というあたりが真実に近いのではないかと思われますね。


Q7:

 "Day Tripper"とは,「昼間っからドラッグやってラリっている奴」のことだと,JohnかPaulが言っていたのを聞いた事がありますが,それはあくまでも裏の意味だと思うのですが,一般的にはどういう意味の言葉なのでしょうか?落流鳥氏は「尻軽女」なんて訳されてましたが,なんか違いますよね。


A7:

 これはJohnがディランの影響下にある頃に作られたドラッグソングですね。(それ故ディランの歌詞と共通する部分がありますね)で,表向きは『日帰り旅行者』ですね。One Way Ticketの部分もあるくらいですから。『尻軽娘』も分からないこともないんですが,『彼女は気まぐれ』ぐらいにしておけば良かったのではないかと思います。(笑)答えになっていませんね。つまり大坂先生のおっしゃる通りの解釈です。イギリス人も皆そう思っているはずです。

 ただ日本で『昼間からドラッグでラリる』なんて対訳にしたら苦情が来るのは必至ですからね,あえてその様な訳になっているのでしょう。(イギリス人でドラッグをするなんて日常生活の一部ですからね。ここでは然してドラッグは珍しくないんですよ。僕はやりませんけど)

 話変わってあのアニメ名作映画Yellow Submarineなのですが,どーも欧米人はあの映画とドラッグを結び付ける人が多いのです。つまり幻覚している(ラリッている)時にあの鮮やかな色彩の映画をみると,とてもいい気分になると彼等は言っています。僕はてっきり子供向けの映画と生粋に考えていたのですが,友人は『No, no, no. It's an Acid Movie!』と口をそろえて言います。

 クラシック音楽一遍のうちの大家さんですら,一昨年のクリスマスにテレビで放映されたのを一緒に見ていて『Acid Movie』と囁いたくらいですから。(さらに日本で初めて公開されたとき,同時上映が『チキチキ,バンバン』だったと言うと,皆笑います。)やはりドラッグ映画なんでしょうかね。同じ理由でディズニーの『ファンタジア』などが彼等に人気があります(笑)


Q8:

 "Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band"の開始から8秒目に,(ざわめきのSEです)どうやら日本人らしい発音で「ポールのあほ!」と叫んでいるように聞き取れる場所があります。本当は何といっているのでしょうか?

それとも集めてきたエキストラの中に本当に日本人がいて,ポールの茶目っ気でそう叫ぶ様に指示されたのでしょうか?


A8:

 うーん,これは何と言っているか僕にも分かりません。でも日本語ではないですよ,きっと。まさかそこまで計算していないでしょう。今晩あたり大家さんに聞かせてみます。


Q9:

 "A Day In The Life"の歌詞についてなのですが,ロンドンの2階建てバスって「1階が禁煙席,2階が喫煙可」なのですか?日本盤"Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band"の日本語訳詞を読むと,なんかそんなニュアンスなのですが?


A9:

 大まかにロンドンの主要交通機関として2種類あります。一つはBritish Railways(以下BR)と言って日本のJRに該るものですが,現在も国営です。(これも時間の問題ですぐ民営化されるみたいですが) もう一つはLondon Transportと言って,こちらがおなじみのUnderground(地下 鉄,以下Tube)とロンドン市内とその郊外を走るBusを運営しています。

 で,この辺りから本題なのですが,手元に資料がないのでうろ覚えで申し訳な いのですが,昔はTubeの駅構内(車内ではないです,念のため),およびBusの 2階車両の後部座席では喫煙できたそうです。但しBusの一階および2階前部座 席は禁煙でしたので,A Day In The Lifeでポールが歌っているように『2階で 一服』と言う風になっています。但し,1986(1987年?この辺がうろ覚えなので す)年,煙草の不始末から起き,死者まで出したKing's Cross駅の大火災によ り,地下鉄構内,車両,およびバス2階後部席までもが全面禁煙になってしまい まいした。現在,これらのエリアで喫煙すると£1000の罰金を払わなくてはいけ ないようになりました。

 ところが,BRに関してはこの条例は当てはまらないようで,BRの駅構内,および 長距離通勤列車の前1車両内,(または後1車両)は今だに喫煙できます。しか も面白い事に,上記のBRと一部路線を共有しているTubeの駅などでは喫煙できる のです。この辺の曖昧さなんかはイギリスっぽいですね。

 と,こんな感じでいいでしょうか?

 他のメンバーとは対照的にSGTに収められているポールの曲は,イギリス市民の ごく普通の生活が出ていて面白いです。

『出来れば家に連れて帰りたいくらいだ』 SGT Pepper's〜

『ちょっと友達の手伝いがあれば試してみるよ』 With A Little Help〜

『昔は怒れる若者だったんだ』 Getting Better

『庭の手入れをして,芝を植えるんだ』 When I'm Sixty Four

『彼女とソファーに座って,もうちょっとの所で,妹もソファーに座っちゃった んだよ』 Lovely Rita

『一服するために,二階へ行く』 A Day In The Life

ドラッグと結び付くようなニュアンスもなきにしもあらずですが,こういうフレ ーズは日本に住んでいたらきっと出てこないでしょうね。(実際イギリスに来る 前まで,僕もドラッグソングだと思っていましたから)やはりイギリスに来て発 見したのは,こういったポールの『小市民性』だったかもしれないです。


撮影:大坂秀樹


Q10:

ところで,Taxman

"Pennies on your eyes"

っていうのは,確か 死者を棺に収めるときにまぶたの上に魔除けのおまじないとしておく penny硬貨のことで,日本風にいえば,「三途の川の渡り賃」みたいなものでしたよね?


A10:

 僕もそのように聞いています。ただ,実際どんな意味があるのか分からないの で,大家さんが帰ってきたら聞いてみます。


Special Thanks To Mr.Hisashi Yonekura, Mr. Noboru Takagi and
"My Guru" Mr. Naoto Ito

ロックで学ぶ現代社会

ロックミュージックを利用した高等学校「現代社会」授業の実践例のご紹介です。

教科書 「ロックの歴史」

ロックミュージックを中心に古代から1980年代までの音楽の歴史を世界史教科書風に記述してみました。