1964年ビートルズ最初の主演映画。 監督はのちに「スーパーマン」で一世を風靡したリチャード=レスター。「エルヴィスの(わざとらしいミュージカル映画)みたいなのはいやだよ」というビートルズのメンバーたちのリクエストもあって,映画はビートルズの4人の架空の一日をドキュメンタリータッチで描くことになった。 この映画を通して,意外にもリンゴ=スターの俳優としての能力が高く評価された。
上映中は日本も含め,各地でスクリーンに向かって絶叫する少女たちが続出。また,朝から深夜まで映画館に居座る客が続出し,中には,ビートルズが映ったスクリーンを記念に切り取って帰る者も!そのため,映画館側は「強制入れ替え」に踏み切った。 劇中歌は"A Hard Day's Night","Can't Buy Me Love"などストレートなロックナンバーが多い。筋立て自体もおもしろく見飽きない映画ではあるが,いかんせん「白黒」が玉に瑕。「史上最大の作戦」等,かつてのモノクロ名作映画が最新のコンピューター技術でカラー作品としてよみがえっている昨今,ぜひカラー化を望みたい作品である。
原題の"A Hard Day's Night"は,文法的にいえばおかしな英語。「大変な一日の夜だったぜ」というような意味か。リンゴは,この手のナンセンス語の大家で,この言葉もリンゴのもの。日本のサザン=オール=スターズの曲における桑田佳祐の作詞法にはこの“リンゴ語”の影響があると思う。 なお,封切り当時の邦題の「ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!」は,当時ユナイテッド映画の社員であった映画評論家の故水野晴夫氏が,この映画を別の短編映画"Beatles Come To Town"と混同してつけたもの。
私が最初にこの映画を見たのは確か(何せ,岡山でそんな映画が上映されることはありえなかったので)やっと大学1年くらいのとき,高田馬場のACTミニシアターというところであった。会場には結構女子高生,女子中学生らしい若者が多く,私もそのひとりに,「君たちビートルズなんて聴くの?」と聞いて,気味悪がられたことがある。ともかく,そんな彼女たちのひとりが,「ジョージって野口五郎に似ててカッコイイ!」といっていたことを思い出す。
1982年にビートルズデビュー20周年を記念してリメイクされ,冒頭に"I'll Cry Instead"が付け加えられ字幕も一新された。しかし,流行語を多用しすぎたため,今となっては逆に非常に古めかしく感じてしまう。リメイク版は日本ではなぜか「少林寺」というカンフー映画と同時上映であったが,子供連れのお母さんが「少林寺」上映終了後,「さ,終わったから次のやつはどうでも言いから帰ろう」と,子どもに言っているのはショックだった。どうでもいいけど…。
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